年齢不問の求人募集は何歳まで応募可能?【人材派遣の実態】

求人募集の原則は年齢不問ですよね。本当にすべての方が採用対象ですか?

アドバイスさせていただきます。

この記事の内容
 ・なぜ年齢不問の求人募集が原則なの?
 ・年齢不問の例外はあるの?
 ・極端に年齢が低い人、年齢が高い人からの応募があったらどうしているの?

ふだん、僕は応募受付の対応をしていたり、求人募集の原稿を作ったりもしています。

もちろん、それ以外の仕事もたくさん担当しています。

また、僕が在籍している会社の事業内容は「人材サービス(派遣事業・請負事業)」です。

少し偏りがありますが、リアルなことを書かせていただきます。

年齢不問求人となっている理由

「年齢不問」求人の法律における根拠法律は雇用対策法です。

今から15年以上も前の話ですが、雇用対策法が2007年(H19年)に改正されたところまで遡ります。

(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)

第九条 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

引用 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

「雇用対策法」と略して表記していますが、正式な名称は異なります。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が正式名称です。

雇用対策法の第9条に「…労働者の募集及び採用について、…年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」と規定されています。

これによって、募集時に年齢制限の禁止が義務化されました。
応募者の年齢を理由にして採否を決定することが禁止、法律違反とされるようになりました。

年齢不問求人の例外

年齢不問には、もちろん例外もあります。

以下の事由に該当する場合は年齢制限を付けた募集が可能です。

例外事由内容

1号
定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

2号
労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合

3号
長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

3号
技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

3号
芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合

3号
60歳以上の高年齢者、就職氷河期世代の不安定就労者・無業者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合
引用 厚生労働省

実務における内容ではありますが、ハローワークに求人票を提出する場合、注意すべきことが3点あります。

  1. 期間の定めのある求人募集の場合は「年齢不問」でないと受理してもらえません
  2. 期間に定めがなくても、免許や資格などの条件を付する場合も「年齢不問」でないと受理してもらえません
  3. 定年制は会社として制度があっても、期間の定めのある求人募集の場合は「定年制なし」に変更されてしまいます

(注意)期間の定めのある、有期雇用社員の求人募集の場合

これらが満たされていない求人票は指導を受けてしまいます。

注意すべき3点の理由はそれぞれあります。

  1. 雇用対策法第9条における年齢不問の規定
  2. 特定の条件を付けて募集するのであれば、募集の窓口を広げて年齢不問にしなければ採用が難しい
  3. 期間に定めのある場合は期間満了を繰り返したとしても定年年齢まで達することができない可能性が高く、雇用が約束されているわけではないという実態

人材派遣の実務面でよくある問題

実務においては年齢が高すぎる場合も、低すぎる場合も採用しにくいケースが多いです。

とはいっても、年齢が高いケースの採用が難しいのが実態です。

低すぎる場合は、残業や深夜勤務(固定の交替勤務であれば可能)が法律上、認められていません。

そのため遵法上の問題といってお断りする(不採用にする)ことも可能です。

ただし、将来的には採用ができるように営業交渉や社内環境や仕事の切り分けが求められるのも事実です。

一方で、応募者の年齢が高すぎる場合は、年齢を理由に断ることはできません。

  • 自社の雇用上限年齢よりも高い応募者の場合
  • 教育にあたるスタッフとの年齢が大きく逆転してしまう場合
  • 取引先のターゲットとは大きく逸れている場合(とくに人材サービス事業)
  • 会社や部署の採用に対する意向から大きく逸れている応募者の場合
  • 業務内容の面での不安が大きい場合

そういったことが課題になると言えます。

今回は応募者の年齢が高すぎる場合に着目してみます。

実際に応募者の年齢だけで言えば、一般的には高すぎる場合の方が採用には結びつきにくいと言えます。

現時点では、人材不足がそこまで急務の課題ではない状況であるとしても、今後を考えた場合はやはり高齢スタッフの採用についてもきちんと視野に入れるべきです。

高年齢の応募者の許容年齢については、

通常業務であれば、自社の雇用上限年齢から5歳マイナスくらいまでが一般的だと言えます。

きちんと仕事の切り分けができるのであれば雇用上限年齢から5歳プラスくらいまでが一般的だと言えます。

派遣業務に携わる人をベースにして考えるのであれば、実態としては60歳定年から5歳マイナスの55歳くらいが上限とも言えます。

もちろん職種や派遣先企業の姿勢にもよりますが、派遣スタッフとしての上限ラインは55歳にあると言えます。

派遣スタッフの就業については、派遣先はモノをいうことができないのが本来の姿ですが、ビジネスである以上、ある程度先方の意向も汲み取らなければいけないものでもあります。

諸条件を加味すると、実務面で「年齢不問求人」にすることは派遣サービスにおいては難しいのが実態です。

【まとめ】派遣スタッフの年齢ボーダーラインは55歳くらいが上限

同じ人材サービス事業であっても

  • 業務請負
  • 一般派遣
  • 紹介予定派遣
  • 有料職業紹介

それぞれカテゴリーによって雇用できる年齢に上限があるのも事実。

自社というよりは派遣先・紹介先との兼ね合いによります。

「派遣」ということをベースにして考えれば、いくら年齢不問が前提にあったとしても大体55歳くらいが応募年齢のボーダーラインだと言えます。

もちろん募集職種や派遣先企業のニーズによって少し変動はしますが、実態としてはそれくらいでしょう。

派遣会社からの理想を言えば、大体50歳くらいまでです。

ところが先ほどの年齢不問求人が法律で定められているため、年齢を理由にして不採用にすることはできません。

だからこそ派遣会社の逃げ道として「スタッフ登録制度」があるとも言えます。

スタッフ登録だけさせておいて、その後仕事の案件を紹介できない・紹介しないといったことも実態してはあります。

高齢応募者の場合、応募自体は可能ではあるものの、稼働に至らないケースの方が多いでしょう。

本記事のまとめ
 ・募集時の「年齢不問」の根拠は雇用対策法第9条
 ・一部例外を除き、年齢不問求人が前提となることで年齢を理由にして不採用にすることはできない
 ・ハローワークでは有期雇用求人を募集する場合は、自動的に年齢不問扱いとされる
 ・所有資格や過去経験の条件を付す場合も自動的に年齢不問扱いとされる
 ・有期雇用契約の求人票の場合は自動的に定年制なし扱いとされる
 ・応募可能年齢というものはないが、実態として55歳くらいの年齢に採用のボーダーラインがある(派遣スタッフの場合)
 ・派遣会社の本音としては50歳くらいまでの応募者を理想としているところが多い

本日は以上です。

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