2023.4.1から時間外労働の割増率が増えたのですか?
もう少し詳しく話を聞きたいです。
アドバイスさせていただきます。
・割増率が50%になるのはどんな時なの?
・いつから割増率が引き上げられるの?
・違反するとどうなるの?
日本国内で運用されている法律は、社会情勢やその他の状況に合わせて改正されることがあります。
労働基準法に代表される労働関係法令も例外ではありません。
法改正が行われると、激変緩和といって急激な変動によって社会が混乱するのを防ぐために、新法(改正法)の施行までに一定の期間が設けられるのが一般的です。
本日は、2023.4.1から施行されたポイントについて書かせていただきます。
法改正にともなう注意点
改正法が施行されたのは2023.4.1です。
施行までは、現行法が適用されるのが法律上のルールです。
「2023.3.31まで中小企業に対する猶予措置がありますが、4月以降はなくなってしまいます」という内容です。
ちなみに大企業は2010年4月から適用されていますので、13年もの猶予措置があったことになります。
大企業か中小企業かで取り扱いが大きく異なったのですが、
- 事業内容
- 資本金
- 従業員数
3点によって変わります。
①または②に該当するかによって中小企業かどうかの判断をされます。
業種 | ①資本金の額または出資の総額 | ②常時使用する労働者数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
上記以外のその他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
実務における注意点
実務における注意点は3点あります。
- 月60時間を超える時間外労働が深夜帯の場合は、25%(深夜手当)+50%(時間外手当)=75%となります。
- 月60時間を超える時間外労働を行った場合、引き上げ分の支払の代わりに有給休暇(代替休暇 )を付与することができます。
- 状況によっては就業規則の変更が必要になることがあります。
とくに難しい内容ではないものの、法令ですので違反することがないように気を付ける必要があります。
きちんと法令通りの支払い率で時間外手当を払わない場合は当然ながら違法となります。
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
労働基準法 第37条
次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
労働基準法 第119条1項1号
労働基準法37条違反なので6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
【まとめ】2023年4月1日以降はすべての会社が法規制の対象となった
2023年3月31日までは中小企業に対しての猶予措置が取られていました。
4月1日以降はすべての会社が対象となりました。
スタッフの時間外労働の状況をこまめに確認して、事業を行う必要も出てきます。
もちろん、法定の割り増し分だけの支払いを行なえば問題になることはありません。
ただ1ヶ月間の時間外が増えてくると、比例して健康被害の発生も懸念されます。
また、三六協定の特別条項部分を超える時間外労働はできませんので、そこに関しては注意が必要です。
・2023.3.31までは大企業のみが対象だった(中小企業に対しては猶予措置が取られていた)
・大企業か中小企業かの線引きは資本金(出資額)と常時雇用する従業員数に基準がある
・時間外の手当を法定通りに支払えば問題になることはないが、スタッフの健康管理には十分な注意が必要
・月60時間を超える時間外労働をした場合は引き上げ分の代わりに代休を与えることで対応も可能
本日は以上です。