募集情報等提供事業者による採用お祝い金の提供が禁止されます

求人サイトの運営事業をしています。
応募効果が落ちてきたので、新たに採用のお祝い金を当社から出そうかと思っています。

先日、行政の方からルール変更の告示がありましたよね。
大事なことなので復習も兼ねて、改めて説明させていただきます。

本記事の内容
✅採用お祝い金について
✅お祝い金に関するルール変更について
✅注意点

採用活動の中で、応募効果を高めるために「採用お祝い金」を付ける会社は実務上よく見かけます。

会社によって、その名称だけでなく支払うタイミングや金額の大小は異なりますが、今回は採用(入社)時に支払われる採用(入社)に対するお祝い金についての記事となります。

先日、アルバイト募集サイトである「マッハバイト」が2025.3.31を以って採用お祝い金である「マッハボーナス」の支給を廃止することを公式リリースしました。

マッハバイトの採用お祝い金【マッハボーナス】が廃止?

募集情報等提供事業者について

法律や規則の条文って、なぜこんなに難しい用語ばかり使うのだろうと思います。

元・法学部の学生である程度、法律に馴染んでいるはずであったとしてもつくづく思います。

しかも漢字ばかり、さらに単語を不自然にくっつけて新しい用語を作ってきます。

今回は「募集情報等提供事業者」です。

用語用語を見ただけで想定される意味
募集情報求人募集に関する情報
など(ほかにもある)
提供情報を第三者に提供・開示
事業者そういったサービスをしている会社

まず、募集情報等提供事業という言葉の意味を確認してみます。

厚生労働省の公式サイトにも記載がありますが、以下のいずれか、または複数を事業として行うことを指します。

引用 厚生労働省

求職者情報の人材データベースを取り扱う会社も含まれるのですが、一番イメージが付きやすいのは求人情報を取り扱うことでしょうか。

ということは端的に言ってしまえば、募集情報等提供事業者とは「求人サイト」の運営会社という理解になります。

採用お祝い金について

採用お祝い金というのは採用が決まったときに支払われるボーナス的なものです。

名称支払う会社支払うタイミング支払い先
・採用お祝い金
・採用ボーナス
・入社お祝い金
・入社ボーナス
・就職お祝い金
・求人サイト運営会社
・採用した会社
・採用決定時
・入社時
・入社後
・採用になった人
・採用した会社
※名称や支払うタイミング・支払い規定等はそれぞれ異なります

採用お祝い金の支払いを禁止する旨のことが書かれている箇所があります。

正確に言えば「金銭等の支払いは好ましくなく、一般的に寛容できる金額を支払うことは」禁止するというものです。

労働者になろうとする者に対する募集情報等提供事業の利用の勧奨については、労働者になろうとする者が希望する地域においてその能力に適合する職業に就くことができるよう、募集情報等提供事業の質を向上させ、これを訴求することによって行うべきものであり、募集情報等提供事業を行う者が労働者になろうとする者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくなく、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することによって行ってはならないこと。(厚生労働省)

ポイント
✅「金銭等」と書かれているので現金だけに限られていない
✅「社会通念上相当と認められる程度」と書かれているだけであって具体的な金額は不明

注意すべきポイント①

今回のルール変更については、あくまでも「募集情報等提供事業者」が対象となるものです。

かんたんに言ってしまえば、求人サイトを運営している会社が対象となります。

なお、スタート時期は2025.4.1以降です。

2021.4.1に行われたルール変更は、「職業紹介事業者」を対象としたものでした。

2021.4.1から入社祝金の支払いは法律で禁止【例外あり】

ともに、純粋な「法律」ではありませんが、職業安定法に基づく指針に規定されているものです。

分かりやすい説明をしているものがありましたので、引用の形で紹介させて頂きます。

指針について
法令上、「指針」 という言菜は多義的に用いられている。多いのは、行政機関が行う政策・施策の基本方針という意味である。

引用元:愛媛県今治市ホームページ

指針について
法律が事業主(事業者)に一定の措置を講ずべきことを義務づけ(努力義務を含む)、その適切かつ有効な実施を図るために定められる指針である。このタイプの指針は、法定の措置義務を具体化するものである。措置義務の根拠はあくまでも法律にあり、指針によって新たな義務が課されるわけではない。なお、義務違反があった楊合に行政機関が違反者に対して行政指導(指導・勧告・助言怜)をすることができる旨が法律で定められるのが通例である。

引用元:行政機関の定める指針の行政法上の位置づけ(興津征雄)

「指針」なので、「法律」ではないものの法律を運用するための規定だと考えるのが一般的と言えます。

注意すべきポイント②

もう1つのポイントは指針の内容が曖昧だということです。

指針の中にこのような文章が見られます。

募集情報等提供事業を行う者が労働者になろうとする者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくなく、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することによって行ってはならない

ポイントは「社会通念上相当と認められる程度」という言葉です。

明確な金額を出していないのです。

こうした言葉はよく法律や裁判などで耳にするものでもあるのですが、こちら側の判断を鈍らせます。

一般的な感覚と具体的な金額を照らし合わせてみた場合に、

✅数千円程度であればOKに思える

✅数万円程度であればOKに思える

✅十数万円まで行くとグレーゾーンからNGに思える

✅数十万円(せいぜい20~30万円)まで行くとなんとなくNGに思える

✅50万円を超えてくるとほぼNGに思える

✅百万円までいったら間違いなくNGに思える

こうした分類ができるのでないかと思われます。

具体的な金額については、その人ごとの生活水準や感覚によって大きく左右されるものです。

とはいえ、10万円を超えてきた場合には指針に抵触する可能性が高いと見て良いでしょう。

【本記事のまとめ】募集情報等提供事業者は採用お祝い金でメリットを得ようと思えば高額な金銭を提供した方が良いが指針に抵触する可能性が高い

2025年4月1日以降は、募集情報等提供事業者を対象とした採用お祝い金の提供が禁止されます。

ただし、一律に禁止ではありません。あくまでも、社会通念上相当と思われる程度を超えての提供が禁止される形となります。

曖昧さを残したルール変更で分かりにくいところもありますが、現在の運用に疑わしい箇所がある場合は控えるべきでしょう。

本記事の内容(もう一度)
✅採用お祝い金について
✅お祝い金に関するルール変更について
✅注意点
本記事のまとめ
✅2021.4.1に職業紹介事業者を対象として採用お祝い金の支給が禁止となった
✅2025.4.1には募集情報等提供事業者を対象として採用お祝い金の支給が原則禁止される
✅あくまでも原則禁止であって、社会通念上相当とされる程度であれば支給が禁止されるものではない
✅募集情報等提供事業者とは求人サイトを運営している事業者のことを指す(それ以外も一部含む)

本日は以上です。

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