2021.4.1から入社祝金の支払いは法律で禁止【例外あり】

採用が難しい状況が続いています。
どうしても採用しなければいけないので、新しく入社する人に入社祝金の支払いを考えています。なにか問題はありますか?

アドバイスさせていただきます。

この記事の内容
 ・入社祝金ってどんなものなの?
 ・入社祝金はなんのために支払うものなの?
 ・入社祝金を支払うことが法律に抵触することはあるの?
 ・関係する法律はなんなの?
 ・実務の面で、どんなことに気を付けたらいいの?

会社に入社した後で法律に関わる機会はけっこう多くあるものです。

労働基準法であったり、男女雇用機会均等法であったり、民法・商法も。

もちろん採用における募集の段階でもある程度、法律との関わりは出てきます。

どのステージにおいても法律に抵触することがないように気を付けておきたいものです。

会社の場合は法人としての責任が問われることもあります。

今回の内容は2021年4月1日からの指針改訂です。
今後大きな影響が生じるかもしれないということで、あえて記事に書かせていただきました。
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行政からの正式なプレスリリース

  • 入社前のことに関する問題は「公共職業安定所(ハローワーク)」が対応
  • 入社後のことに関する問題は「労働基準監督署」が対応

一般的には、このように分けることができます。

そして、その2つの組織を管掌しているのが各都道府県の労働局、労働局の上位機関は厚生労働省です。

法改正についてはソースがあります。

引用 厚生労働省
引用 東京労働局

行政から出されるリーフレットには法改正などに関する重要な情報も含まれています。

定期的に各機関のサイトに目を通したり、行政主催の説明会や官庁訪問はしておくべきです。

きちんと読まないと間違った解釈をしてしまう内容

先ほど、画像に出したリーフレットには注意が必要です。

引用 厚生労働省

タイトルだけ見てしまうと、よく求人募集の際に使われる「入社祝金」が禁止されたのかと思ってしまうような内容です。

そんなことに陥らないためにも、全てをきちんと読む必要があります。

就職お祝い金などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました

会社によって呼び方は異なりますが、一般的には

  • 入社祝金
  • 入社手当
  • 入社おめでとう手当
  • 新生活応援費用
  • 生活支援金

などと呼ばれることが多いようです。

本質的には応募や入社を促進するための手当だと考えるべきです。

引用 ルーキー(2015年4月発行)

上の画像は、沖縄県内で発刊されている「ルーキー」という求人誌から引用したものです。

社名や勤務地については黒塗りしてあります。

2つの会社の案件ですが、上の会社は「生活支援金」、下の会社は「入社祝金」という名目です。

いずれも応募を促進するものであることには変わらないはず。

ここでもう一度、厚生労働省のリーフレットに記載のあった内容を振り返ってみます。

「就職お祝い金などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました」

文言どおりに解釈した場合、先ほどの広告のような表記はすべてアウトとなります。

よく読んでみると、

引用 厚生労働省

職業紹介事業者に対しての指針の改正でした。

僕は法律の専門家ではありませんので白・黒の正確な判断はできませんが、3点のポイントがあります。

ポイント
・職業紹介事業者が対象の主体となる
・職業紹介の事業における就職者への金銭支払いが対象
・金銭を払うことが一律に禁止されているわけではない

リーフレットのポイント3点について

先ほどの3点についてもう一度、リーフレットを見ながら考えてみます。

ポイント
①職業紹介事業者が対象の主体となる
②職業紹介の事業における就職者への金銭支払いが対象
③金銭を払うことが一律に禁止されているわけではない
  1. 「職業紹介事業者の皆さまへ」と書かれているので、それ以外の事業者については規制の対象外となる可能性が高いです。実務的には入社祝金を出している会社のほとんどは人材派遣や紹介を行う会社であることが多く、入社祝金を支給しますという会社の事業内容を調べるとだいたい派遣会社です。
  2. 事例紹介の中で、「繰り返し手数料収入を得ようとする」と書かれているので、労働行政はそこに目を付けたと思われます。派遣会社のスタッフ募集でも、とくに有料職業紹介のカテゴリーに該当する職種の募集については厳しくチェックが入ることが予測されます
  3. 「社会通念上相当と認められる程度を超えて」と書かれているので、人によってボーダーラインは変わります。ただ、数万~十数万程度あれば、採用難易度を考えても社会通念上の範囲内ではないかと思われます。「社会通念上相当」は、極端なものでない限り罰則をあたえることは難しいのが現実的です。

実際の事例

実際に求人募集で見かけたもので考えてみます。

 会社の事業内容   配属先   支払金額  考えられる判定(●●と思われる) 
人材サービス派遣先5万円セーフだと思われる
人材サービス派遣先50万円セーフだと思われる(アウトに近い)
人材サービス職業紹介先50万円アウトだと思われる
人材サービス自社オフィス50万円セーフだと思われる
コンビニ店舗30万円セーフだと思われる
製造業製造ライン50万円セーフだと思われる
飲食店調理スタッフ5万円セーフだと思われる

給与1ヶ月分の30万円くらいであればセーフだと思われます。

リーフレットをしっかり読んでいくと、有料職業紹介事業が主なターゲットになっていることが分かります。

指針とはいっても、法律と同じだと捉えて問題はありません。

ただ、特定の人や業種だけをターゲットにしてしまうのは、本来は良くないことです。

【まとめ】明確な線引きをしないのが法律の難しいところ

法律は法解釈の問題もあるので明確な線引きができないことが多いです。

また、法律に違反したからといって全てが行政罰・刑事罰の対象になるとは限らないことも多いです。

とくに「社会通念上相当」というフレーズがあることで、余計に分かりにくいものになっています。

分かりにくい場合は一度、法律の趣旨を考えてみるといいヒントになります。

なぜ、そういう規定が作られたのかを考えるということです。

今回はあくまでも労働需給の安定、雇用の安定にあります。

高い入社祝金を提示することで、自分の会社だけが労働力を供給しやすくなる事態を抑制するための条文だと言えます。

そういった点ではどの業種・職種であっても法律に抵触する可能性があることは忘れてはいけません。

本日の記事は職業安定法に関するものでしたが、労働関係法令はすべて大切になります。

一度、いろいろなポイントについても勉強することをオススメします。

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本記事のまとめ
 ・2021年4月1日から指針が新たに変わった
 ・法律の条文にしばしば使われる「社会通念上」というフレーズが解釈を分かりにくいものにしている
 ・職業紹介事業者が常識範囲を大きく超えるような入社祝金の支給を禁止するという内容が改正のポイント
 ・改正の趣旨は労働需給の安定、雇用の安定にある
 ・今後は他業種に展開されることも十分あり得るので一定の注意は必要
 ・法規制について考えるときは、趣旨(なぜそういった規定が作られたのか)を考えてみると良い

本日は以上です。

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