仕事は辞めるべき?不妊治療との両立は?【中小企業ケーススタディ】

女性社員から不妊治療を受けたいという話がありました。
職場は人手不足で困っています、どうすべきですか?

本日は事例紹介の記事になります。

この記事の内容
 ・労務管理におけるケーススタディを勉強したい
 ・不妊治療を受けたいと考えている女性社員をどのように扱ったらいいの?
 ・働きやすい職場を作りたい、その一歩は何をすべきなの?
 ・女性の登用を積極的に行いたい

僕はいまの職場で、数年だけですが労務管理を担当していたことがあります。

採用領域での法律の問題と、入社後の労務管理における法律の問題はそれぞれ性質が異なります。

どちらも気を付けるべきことが多く、難しい問題を抱えていることは事実です。

そうした経緯もあり、少しだけ法律知識は持っていますので、社内外含めていろいろな方から相談を受けます。

本日の記事は法的にアウトなことも含まれています。

こんなことはいけませんという注意喚起を込めて書かせていただきます。

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ケーススタディ①

Aさんの雇用条件
・正社員雇用
・所定労働時間は9:00~18:00(休憩1時間、実働8時間)
・給与形態は月給制(20日締め、当月末払い)
・基本的には土日祝休み、ただし第3・第4土曜日は通常出勤
・商品の梱包、出荷がメインの仕事
・社会保険完備

Mさんは不妊治療のために定期的に婦人科に通院しています。

不妊治療はMさんの体に合わせて行われるため、事前に日程が決められないことが多く、その点は会社に申出をして社長の許可をもらっています。途中で抜けたり、定時の少し前に早退させてもらったりしています。

Mさんなりに残業をしたり、早出出勤などでリカバリーは試みています。

そのような状況でMさんは、休日に足指を骨折しました。仕事とは関係のないケガです。全治2~3ケ月、松葉杖が必要で本来の業務遂行は不可能となりました。

仕事のスピードは遅いながらも、Mさんなりにできる範囲内で業務をしていましたが、ある日、社長から呼び出しがあり「不妊治療といい、ケガといい、もう正社員として雇入れを継続をすることは難しいから、パートになるか、退職をするか検討するように」とのことでした。

その後、パートタイマーとして継続して働くことを了承しましたが、雇用契約書の提示は一切なく、2021年7月18日(日曜日)に2021.6.21~2023.5.31までの電子契約書がオンラインで提示され、Mさんは電子サインをしました。

Mさんからの相談内容

指摘すべき問題点

いくつか問題となるところはありますが、なかでも問題点は2点です。

・不妊治療および私的なケガを理由としたパートへの切り替え、退職勧奨
・契約の切り替えが行われた後も雇用契約書の締結がなく、労働条件通知書の交付がない

不妊治療については会社側がOKしていた経緯があったにも関わらず、後日、方針転換されています。

Mさんへの打診は、「このまま不妊治療を続けるならパートか、退職か決めるように」という言い方です。

会社の社長からの打診は非常に重たいものであるとも言えます。

自己都合退職へ持っていこうとしているあたりも、法的にはかなり「黒」に近いと言えます。

また、今回の事例のように、新たな雇用契約書を取り交わす前に、新しい条件で雇用をすることはアウトです。

新しい雇用契約書を取り交わすまでは、本来は旧の契約書の条件で雇用をしなければなりません。

雇用契約書を労働条件通知書はセットで用意が必要です。

契約変更をするにしても、ある程度の猶予期間は設けるべきでした。

ケーススタディ②

そして、もう1つの事例紹介です。

社長は、海外での滞在期間が長かったこともあり日本の労働法に関することがあまり分からないそうです。

部下(苦情受付の担当者)に調べて報告するように依頼しましたが、その部下も法律には疎いです。ネットで調べたところ、有給が取得できるのは「1日8時間、週5日勤務の社員」だけだと書いてあったので、そのまま社長に伝えました。

社長は「パート契約の人には有給はない」と片づけてしまいましたが、パートタイマーYさんの雇用契約書の年次有給休暇の欄には法定通り、またその他事項は労働基準法に沿って協議すると書かれています。

さらに苦情申し立て先の社員は、自分がそのような担当になっていることも知らず、有給のことは自分に言われても困ると言っています。

Yさんからの相談内容

指摘すべき問題点

労働法を勉強したことのある人ならすぐに分かることですが、パートタイマーでも年次有給休暇は発生します。

「パート契約の人には有給がない」というのは労働基準法違反ですと言っているようなものです。

ただし、フルタイムの社員とは違って、週の所定労働日数(年間の労働日数)によって付与日数は異なります。

雇用契約書の苦情処理担当に記名をしてある人が、苦情を自分に言われても困るというのも好ましくありません。

雇用契約書や就業規則に記載のある事項を雇用主側が知らないというのはアウトです。

法律を勉強するときのオススメポイント
・条文だけ読むことは避ける
・資格試験の問題をベースに背景を考えると良い
・裁判所の判例は覚えておくと良い
・興味のある分野、自分が経験した分野から勉強していくと良い

参考文献については著名な人の本から読んでいくと良いです。

ただし、法学者の見解と労働行政の見解はしばしばズレることもあるので注意が必要です。

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僕が富山大学の学生時代に、小畑史子助教授(現・京都大学教授)の講義を受けていました。

現在は、厚生労働省の第37期中央労働委員会(公益委員)の1人でもあります。

当時から分かりやすい講義と学生にも評判で、現在に繋がっていますのでオススメです。

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【まとめ】働きやすい遵法意識の高い職場づくりを

今回は、2件の事例をもとに記事を書かせていただきました。

採用選考時よりも、入社後に法律問題に直面する方が圧倒的に多いです。

どんな場面でも労働基準法を常にベースにして会社としての判断をしていくことが求められます。

ポイントはいくつかありました。

  1. 不妊治療とケガを理由とした雇用区分の切り替え、退職勧奨
  2. パートタイマーの年次有給休暇
  3. 労働契約の締結に関わる問題
  4. 会社のトップである社長の言動

待遇に関することも、有給などの福利厚生に関わることも、本日のケーススタディは残念ながら中小企業ではしばしば起こっている問題です。

不妊治療だけでなく、育児休暇や介護休暇の取得も中小企業だと思い通りにいかないことも多いと聞きます。

職場環境がよければ、退職は間違いなく減ります。

給与面だけの問題ではありません。

従業員の会社を見る目によって、リファラル採用にも繋がるなど相乗効果も生んでくれます。

今後ますます人材不足感が強まることは明らかですので、新規雇い入れと両軸で社内の環境改善に努めていくべきです。

また、会社として恥ずかしくないように、担当になったのであればそれなりの法律知識は身に付けておきたいものです。

本記事のまとめ
 ・退職勧奨と取られるような行為はいけない
 ・雇用契約書の締結前に雇用条件の変更を行うことはNG
 ・遡って契約書の締結をすることはNG
 ・パートタイマーにも年次有給休暇の権利はある(所定労働日数により付与日数は変動する)
 ・社内環境の改善をすることが人材不足対策の第一歩

本日は以上です。

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