女性社員から不妊治療を受けたいという話がありました。
本日は事例紹介です。
・働きやすい職場を作りたい
・女性の登用を積極的に行いたい
労務管理を担当していた時期があり、少しだけ知識は持っていますので相談を受けることもあります。
アウトなことも含まれていたので、こんなことはいけませんという意味合いも込めて書かせていただきます。
ケーススタディ①
・所定労働時間は9:00~18:00(実働8時間)
・給与形態は月給制(20日締め、当月末払い)
・土日休みですが、第3・第4土曜日は通常出勤
・商品の梱包、出荷がメインの仕事
・社会保険完備
Aさんは不妊治療のために定期的に婦人科に通院しています。
治療は事前に日程が決められないことが多く、その点は会社に申出をして許可をもらっています。途中で抜けたり、定時の少し前に早退させてもらったりしています。
彼女なりにも残業をしたり、早出出勤などでリカバリーは試みています。
そのような状況でAさんは、休日に足指を骨折しました。仕事とは関係のないケガです。全治2~3ケ月、松葉杖が必要で本来の業務遂行は不可能です。
遅いながらもできる範囲内で業務をしていましたが、ある日、代表取締役から呼び出しがあり「不妊治療といい、ケガといい、もう正社員として雇入れを継続をすることは難しいから、パートになるか、退職をするか検討するように」とのことでした。
その後、パートタイマーとして継続して働くことを了承しましたが、雇用契約書の提示は一切なく、7月18日(日曜日)に2021.6.21~2023.5.31までの電子契約書がオンラインで提示され、Mさんは電子サインをしました。
ケーススタディ①の問題点
いくつか問題となるところはありますが、なかでも問題点は2点です。
・契約の切り替えが行われた後も雇用契約書の締結がなく、労働条件通知書の交付がない
不妊治療については会社側がOKしていた経緯があったにも関わらず、方針転換がされています。
Aさんへの打診は、「このまま不妊治療を続けるならパートか、退職か決めるように」という言い方です。
自己都合退職へ持っていこうとしているあたりも、法的にはかなり「黒」に使いと言えます。
また、今回の事例のように、新たな雇用契約書を取り交わす前に、新しい条件で雇用をすることはアウトです。
取り交わすまでは、本来は旧の契約書で雇用をしなければなりません。
雇用契約書を労働条件通知書はセットで用意が必要です。
契約変更をするにしても、ある程度の猶予期間は設けるべきでした。
ケーススタディ②
そして、もう1つの事例紹介です。
代表取締役は、海外での滞在期間が長かったこともあり日本の労働法に関することがあまり分からないそうです。
部下(苦情受付の担当者)に調べて報告するように依頼しましたが、その部下も法には疎いです。ネットで調べたところ、有給が取得できるのは「1日8時間、週5日勤務の社員」だけだと書いてあったので、そのまま社長に伝えました。
社長は「パート契約の人には有給はない」と片づけてしまいましたが、パートタイマーBさんの雇用契約書の年次有給休暇の欄には法定通り、またその他事項は労働基準法に沿って協議すると書かれています。
さらに苦情申し立て先の社員は、自分がそのような担当になっていることも知らず、有給のことは自分に言われても困ると言っています。
ケーススタディ②の問題点
労働法を勉強したことのある人ならすぐに分かることですが、パートタイマーでも年次有給休暇は発生します。
「パート契約の人には有給がない」というのは労働基準法違反ですと言っているようなものです。
ただし、フルタイムの社員とは違って、週の所定労働日数(年間の労働日数)によって付与日数は異なります。
雇用契約書の苦情処理担当に記名をしてある人が、苦情を自分に言われても困るというのも好ましくありません。
【まとめ】働きやすい遵法意識の高い職場づくりを
今回は、2件の事例をもとに記事を書かせていただきました。
不妊治療をしているから、ケガをしているからということではなく、全ての人が働きやすい職場環境を整備していかなければならないなという典型的な事例でした。
職場環境がよければ、退職は間違いなく減ります。
リファラル採用にも繋がるなど相乗効果を生みます。
会社として恥ずかしくないように、担当になったのであればそれなりの知識は身に付けたいものです。
・契約書の締結後に内容の変更を行うこと(遡って契約書の締結はNG)
・パートタイマーにも年次有給休暇の権利はある
本日は以上です。